●OBSESSION●●●

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●狂気●◎◎◎◎




「子供の頃、ぼくは
汽車の口真似が上手かった
ぼくは
世界の涯てが
自分自身の夢のなかにしかないことを
知っていたのだ」

        寺山修司 「懐かしのわが家」より




●世界の涯てを見てみたい。
若い頃の僕は狂気というものに強く憧れた。
勿論、それは単なる憧れに過ぎなかった。
当時の僕は、自分自身の心を縛り付けている枠組みを取り外したかったのだ。
狂気の淵で、真実を垣間見る瞬間に出会いたかったのだ。
この場合、僕の言う世界の涯てとは、内面世界のことだ。



●現在のようにグローバル化が推進され、同質化した世界において、現実世界に涯てを見出すことは、いとも容易く感じられる。
しかし反対に、現代では人々の心の中には深く大きな空洞がぽっかり開いて、その世界の涯てを極めることは、なかなか出来そうにも無い。またその穴は、益々巨大化しているように思われる。
僕にはその大きく開いた暗闇の中には、とてつもない怪物が息を潜めていそうな気がするのだ。
僕は、いつかこの怪物と対話してみたと念じていた。
だからこそ、深夜ともなるとじっと息を潜めている怪物に向かって、意志伝達の方法を考えていたのだ。
最近になって、穴の底でこの怪物が激しい動きを始めていることに、僕は気がついていた。



●現在、毎日のように新聞紙面を想像を絶する凶悪犯罪が埋めている。
少年の凶悪犯罪も増加している。
これらの犯罪の特徴に、罪に対する規範意識の欠如が認められる。
これは、法的規範以前の内面的規範の欠如、若しくは崩壊という問題を抱えている。
僕が若い頃に求めていたものは、自らを縛り付けている枠組みを壊すことだった。
それは、内面的規範を壊すのではなく、全く新しい次元を垣間見たいが為の枠組みの破壊だったのだ。
しかし、今の世の中では、法的規範を内包する最も大きく大切な規範である内面的規範そのものが崩壊してしまったのだ。恥じらいが人間の意識から消えた・・・・この意味は大きい。


●僕は、ホッブスのことを考えていた。
彼によれば、人間の本性の中には、彼らを不断の闘争に駆り立てる3つの要因(戦争、臆病、栄誉)があるとされる。
だからこそ、人間を威圧する強力な権力が失墜した時、彼らは戦争状態に陥るという主張だ。
現代とは神が死に、あらゆる権威が衣装を剥がされ、裸にされた時代であろう。
こんな時代であれば、人々は心の座標軸を失い病み、簡単に戦争状態に陥るのかもしれない。
言葉を変えれば、犯罪者にとって犯罪行為とは、一種の戦争状態に於ける戦争行為であると置き換えも可能かもしれないのだ。
この意味からすれば、僕達は新たなる怪物を生み出さなければならない時期にきているのだ。



●僕が睡眠時無呼吸症候群に罹ったのは、この暗闇の穴の底で蠢いている怪物と対話していた頃だった。
この怪物は、その大きな口で、地球上の全ての空気を独り占めしようと目論んでいたのだった。
それを知った僕は、怪物が地上に這い上がってくる前に、殺さなくてはならないと確信したのだ。
怪物には、エゴしかなかった。
全世界の支配しかなかったのだ。
この怪物の名前は、『D』といい、操っている組織はある秘密結社であった。
さて、僕達はどんな方法でこの怪物から逃れることが可能なのだろうか?



穴は日増しに大きくなり、怪物は日々成長しているのだ。


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『祈り』


我々は、一体どこから来て、どこへ行くのだろうか?
それを考える前に、まず
私が見た夢の話をしよう。

それは、空一面を覆い尽くしたどす黒い雲。
そして、その雲の中から、海が空から地に吐き出される。
その勢いは凄まじく、陸地はすぐに海へと変貌を遂げる。
要するに、空から滝のような勢いで、海が吐き出されるのだ。
私は、丘の上からその情景を醒めた目で見つめている。

その頃、私は脳神経をやられ、寝込んでいた。
MRIの結果、左脳を繋ぐ神経をやられていた。
体の自由が利かず、丁度重力の違う星へと旅したような気分であった。
寝ていても、常に数キロの錘を上から押し付けられている感覚に囚われていた。
まるで自分の体でないような異様な感覚に苛まれ、呼吸は苦しく、いつ停止してもおかしくないなと実感していた。

そんな状態の時に、この夢を見たのだ。
あれだけ激しい水が天から音を発して地上に押し出されているにもかかわらず、
周囲は、妙に乾いた空気に包まれていた。
一面が酷く乾いた砂漠の世界のような気がしたのだ。

海はどんどん深くなり、空から吐き出される水も益々勢いを増していた。
このままでは、私のいる丘も、やがて水の底に沈んでしまうだろうな・・・
ぼんやりとそんなことを感情も無く思っていた。

東日本の震災も、タイの洪水も、その頃には想像も出来なかった。
でも、やがて地球が大変な災害に見舞われることは、その時に直感的に感じていた。

その夢から2年が経過した。
私は、すっかり完治したが、反対に地球はあらゆる意味で様々な問題に直面している。
夢は、ある意味で、現在の状況を予告していたのかもしれない。












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