私は「乾坤一擲」の大勝負に出たのだった。
何のですって!?
それは、『ロト6』なのだ。
1等を取れば、運が良ければ2億円が手に入る。
その金があれば、もう一度仕事で勝負することが出来る。
しかも数字を自分で選べるのだ。
43個の数字から6つを選ぶだけでよい。
これは簡単なことじゃないか!
こんなに簡単ならば、
貰ったも同然!
私は持てる全ての金を賭けて勝負にでたのだ!
「ガガーーーーン!」
なんということだ!
500セットを買ったのに、悉く外れてしまっていた!
当たったのは3セットのみ・・・・
しかも末等の1000円が3枚だけだった・・・・・
「うおおおおおおっ・・・・・・・・!」
「元気を出しなよ。」
傷心している私を見て、バス停にいたハト君が慰めてくれた。
木上のカラスが、哀れむように声をかけてきた。
しかし馬鹿にしているのではなく、気の毒がっているようだった。
きっと自分も散々こんな経験をしたのだろう・・・・
傷心した私は、無意識のうちに川辺を歩いていた。
すると漁師のおじさんが声をかけてきた。
「人生ぼちぼちがいいんだって。」
それは悟りきった諦観の境地にいる人間の言葉だった。