●死と再生の秘儀
(The ceremony that death and regeneration are secret.)
■作品解説■

「体系の不在もまたひとつの体系であり、しかも最上の体系である。」
                                  ---ツァラ---




●もし神に形があるとすれば、色彩の中にこそ神を見出すべきだろう。
我々の魂が肉体を離脱した時に味わう感覚は、絶対的な孤独感であろう。
広大な宇宙に投げ出された孤立感は、眩暈を伴い、自らの卑小さを嫌というほど認識させ、異世界の同化には、様々な心理的葛藤を経なくてはならないだろう。
その中で現れる幻影には、意識の混濁が付随し、地上に於ける経験が客観化され変形された形で表出されるであろう。

要するに、冥府へ入るとは異次元への霊魂の旅立ちであり、民族の原型に立ち返り、現世での行いを自らの心が審判を下す場所であろう。
その時味わう後悔を伴う様々な経験が、走馬灯のように繰り広げられる世界はまさに地獄絵図とも呼ぶべきものであろう。。
また、それらは象徴的な幻影を伴うことであろう。
その恐怖は筆舌に耐えがたいもので、我々はきっと救済を求めて神を見るに違いない。


しかし、神とは自然の法則を人間世界に当て嵌め、理解しやすく解釈した概念なのだ。
その時に見た神の姿とは、現世での教育により育まれた神を、記憶の残滓をかき集めて、自らの魂がつくり上げた幻影に過ぎないのだ。
なぜなら、人間は絶対的な孤独には耐えることが出来ない。
いわば、神の象徴的出現は、魂が自らの心を恐怖から救済する為に誂えた装置にすぎないのだ。


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