私の知人に鼻毛を抜かない人がいる。
その為、彼の鼻毛は鼻の穴を飛び出し、2本髭のようににょっきり口の上を覆っている。
彼のあだ名は、『バカボンのパパ』だった。
私は、何故鼻毛を抜かないのか、彼に問いただしたことがある。
本人曰く・・・
「怖いから。」

それが鼻毛を伸ばしている理由だった。
「それならハサミで切ったらどうだい?」
私がそう言うと、彼は困った表情で、
「実は僕の鼻毛は、ただの毛ではないんだ。生物なんだよ。僕の鼻の中を住処にしている生き物なんだ。」
そう答えた。
「こいつは、頭が少しいかれているな・・・」
私がそのように思ったことを感じ取った彼は、
「実際に、これは本当なんだよ。よく僕の鼻毛を見てごらん!」
ムッとした表情で、言った。
「何を馬鹿なことを・・・・」
私は、馬鹿を承知で彼の鼻毛を凝視した。
すると驚いたことに、彼の鼻毛は水の中の糸ミミズのように、四方に向ってそれぞれ異なった動きで活発に動いていたのだ。
それは糸ミミズそのもののようだった。
驚いた私は、
「そ、そ、その鼻毛は確かに生きているみたいだ。では、その鼻毛は君の鼻水を吸って生きているのかい!?」
彼は得意げに、
「いや、そうじゃないよ。(フッと息を吐くと)実は彼らは蚊やハエを捕まえてそれを食べているんだ。」
彼はニャッと不気味に笑みを浮かべた。

私は、恐る恐るもう一度彼の鼻毛を見つめた。
「うぅ。。。。。
確かに生きている。」
糸ミミズのように活発に動き回っている。
そして、彼が語ったことは嘘ではなかった。
彼の前を一匹のハエが飛んだ。
そして、彼の腕にとまった。
すると彼の鼻毛は、
「ギューーーーーン!」

と勢いよく伸びたと思った瞬間、
そのハエを搦め手にしていたのだ。

逃げようと必死にもがき苦しむハエ。
しかし次の瞬間、ハエの体は目まぐるしく動く鼻毛の為、バラバラに引きちぎられていた。
「もしゃもしゃもしゃ。」
ハエは、明らかに鼻毛によって跡形もなく食べられてしまったのだ。
ONE BROKEN HEART FOR SALE
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私が湖の畔を散歩していた時のことだ。
子供達が、草陰に隠れて何かを見つめていた。
なんだろう?
興味を覚えた私は、子供たちの視線の方角へ眼をやった。


それは、長閑な陽を浴びて居眠りしている2匹の河童だった・・・
そして、すぐ近くにはキビタキの雛もいた。
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