■断片■

「人間の性質は試練と争闘により矯正される。」
                                                   
 イマヌエル・スエデンボルグ「霊界日記」より






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●虚空(カオス)

ヘシオドスによれば、この世界に初めて生まれた神の名は、カオスであった。

●カオス(混沌)からガイア(大地)は生まれ、ガイアよりウラノス(天)が生まれた。



●「宇宙の諸力が終結しあい、水の上に神の子らが共に集まり合う音が沸き起こりまし た。」
「明けの星達は共に唄い合い、人の受肉の為に備えられた世界の誕生を讃る声が水の 上に湧き起こった時に、まず最初‘霧‘がその周囲を包みました。」

「そして、その水の上に神の子らが共に集まり合う音が沸き起こりました。」

エドガ−・ケイシ− は、地球に最初の生命体が現れた瞬間を上のように表現した。
地球創世の瞬間、その時に水辺に現れたのは、実は神の子らであったのだ。

●想像してみて欲しい。
地球の創世の時、靄に包まれた水辺に天使達が集い、そして歌を歌う姿を・・・・
地球誕生を祝って、彼らは歓びの気持ちを歌に託したのである。
そして、靄はやがて晴れ渡り、上空には数え切れない程の星の世界が広がったのだ。目が届く範囲全てを埋め尽くした星屑達・・・・
それはあたかも宝石を散りばめたように美しかったに違いない。

そして、
天使達の歓びの合唱は、宇宙の果てまで響き渡ったことだろう・・・

●盲目の吟遊詩人ホメロスの描いた叙事詩に導かれ、シュリーマンはトロイア遺跡を発掘した。
ギリシャ最古の詩人ホメロスの叙事詩は、事実を詩っていたのだ。
それが真実であることを、シュリーマンは確信していた。
その根拠は、自らの信念以外の何ものではなかった。
実は人間には神の子が宿っている。
誰しも素直に心の声に耳を傾けたならば、きっと、その声を聴くことが出来る筈なのだ。

●何ものにも囚われない素直な気持ちで、宇宙に心を託したならば・・・
誰しも宇宙に鳴り響くミュージックを聴くことが出来る筈なのだ。
実は、宇宙は音楽で成り立っている。
周波数で成立しているのだ。
そのメロディは時に優しく、時に悲しく、時に怒りに充ち、そして時に勇壮に鳴り響いている。
その音楽に素直に聴き入れば、我々は宇宙で起こったこと全てを知ることが出来る筈なのだ。
過去・現在・未来
宇宙の中では、全てが渾然一体となって存在しているのだ。
宇宙には沢山の魂が浮遊しているのだ。
星達も人間同様に生きているのだ。
そして、歌っている。

しかし・・・・
現在、宇宙で鳴り響くシンフォニーは・・・・


とても悲しく鳴り響いている。
僕には、そう思えるのだ・・・・





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☆Doppler effect☆

●昼間の間、狂った様に吹き荒れた嵐が去った夜、
紺碧色の空に蜘蛛の巣を張ったように星が輝いている。
夜空に散りばめられた星が、こんな奇妙な形をしていることを、俺はこれまで知らなかった。
それらは心臓の鼓動のように、間欠的に光電を放射している。

あの星の光りが、一体いつからこの地球に降り注いでいるのか分らないが、それらは自らの生体時計に呼応して呼吸している夜空の生き物だ。

獲物がかかるのを何時間でもじっと動かず待っている蜘蛛のように、あるいは光りを放射して獲物を呼び込む深海に棲む発光生物のように、
それらは永遠に?・・・・生きている。

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●FANTASIA

俺は、世界がモノクロームに沈む日没前の
空が朱く染まっていく一瞬の輝きが好きだ。
あの際立った色を表現しようとして、果たしていくつもの色彩でキャンバスを塗りこめたことか・・・

しかし、あの官能的な美を表現する事は不可能だ。
昨日、車窓から偶然に眺めた、空が黒ずむ前の一瞬の煌き
俺は、脳裏に痛いほど鮮明にその色彩を焼き付けた筈なのだが
今となっては、あの色彩を思い出すことさえ出来ないのだ。

それは、烈しい雨を齎した雲の切れ間から、斑模様として零れるように
散りばめられた天空の宝玉だった。

あの朱色に照射された事物は全て、形態を喪失し、色彩の魔術に溶解し曖昧な輪郭を成すフイルムの一画面として凝縮された。

世界は、熟睡したように無防備に身を任せ、

まさに色彩の海の中へと沈み込んでいったのだ・・・

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●愛の光り(無上の愛)



芸術作品は美術館に展示されていては生きてこない。
自然の中に置かれた時、初めてその作品が本来持つ価値と力が試されるのである。
が、人間というものは、美術館という器に作品が収まっている時には安心して、その価値を多大に評価するのだが、それらが身近な場所に置かれた時には、気にも留めず、素通りして行き去ってしまう。

器とは何か?
それは権威の象徴に過ぎない。
権威は作品の価値付けの衣であってはならないのだ。
本当に深いものは、目には留まらない。
絶対に形としてみる事は出来ない筈だ。
作品が自然の中に同化した時、その時こそ本当の意味で作品は息吹を吹き込まれるのかもしれない。
母親の子に対する無償の愛と同様に・・・・・


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●芸術の反逆
at 2003 01/07 20:33 編集

ここに僕は、芸術の反逆の烽火を上げる。

「倦怠、焦燥、後悔の渦巻く硝子の絵の具箱を幻想の砂丘という一滴の血と不条理の筆で攪拌した時、伝説は恍惚とした狂気として疲弊した
街を彷徨い始めた・・・」
     ノクターン宣言1985より



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■眠れぬ美女■



扉を開けなさい。その部屋には夢(ドリ-ム)がいっぱい詰まっているのです。
その夢とは、現実に対する激しい憎悪であり、日常を破壊する燃え上がる情念(パッ
ション)なのです。

眠れない夜、私は冥府に咲くという蒼白い華、アスポデロスをイメ−ジしているので
す。
その華の形象を皆様に了解していただくのに、私の貧困なボキャブラリ−で表現する
のは非常に困難なのですが、それは暗黒の中で儚く、そして昏く燃え続ける地球(ア-
ス)のように私には思えるのです。

万物の尺度は微生物(アミ−バ)です。微生物は死体の有機物を分解し、自然に分け
前を返還し、どのような生物よりも巧みに環境に適応し、進化もせずに生存(いきな
がら)えます。
これは絶え間無く続けられる時空の変移と生物の変異の中にあって、恒常を維持し続
けるという眩暈がする程の歴史の秩序の支配を獲得した証なのです。

真理とは傲慢さで武装した観念の賜物なのです。
観念とは所詮充たされない欲望と孤独の不安を醸造し、それを引き摺りながら絶えず
変容を繰り返す、獏とした幻想(ファンタジ−)の標本抽出(サンプリング)に過ぎ
ないのです。

「孤独」とは私であり、あなた・・・・・。
アスワンハイダムがナイル河周辺の肥沃な土地を殺してしまったように、読書によっ
て身に付けた技巧(テクニック)は、私の感性を殺戮し、言葉から真っ赤に脈打つ純粋な
血液を奪ってしまったのです。
お願い。真夏の夜の饗宴の主賓である一匹の蚊よ!
倦怠と汚辱の染み付いた私の淀んだ血液だけでなく、今の「孤独・・・こ・ど・
く」、私の単調な日常をも、吸い取ってはくれませんか?

都市(エレガントシティ)---進化の過程で絶えず変態(メタモルフォ−ゼ)を繰り返
し、機能美を優先的に追求し続けた共有空間(コモンスペ-ス)としての都市は、有機体の
一部としてのグロ-バルな視点を見失い、ト-タルな生物圏の構成員たる自らの存在を忘却
し、自然界のバランスを崩してしまった虚ろなる亡霊(ゴ-スト)なのです。

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●空に突然、誰も見たことのない物体が北西の方向から飛来した。帝国の100周年の祝祭の式場に、突然それは現れたのだ。
人々は驚いて空を見上げた。
それが、悪意に満ちたものなのか、あるいは神が使わしたものかは分らない。それだけに、人々の不安は強く動揺が会場で広がった。
「この世の終わりが来た。」と泣き叫ぶ人々、物体に祈りを奉げる人々、唖然として見上げる人々、はたまた会場から逃げ出す人々・・


その物体は、紫色の尾を棚引かせながら、人々を嘲笑う様に南東の方向へ頭上を通り抜けていったのだ。

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▼▼▲HLA抗原が狂いを生じた時▼

自分と侵入者との区別が出来なくなった細胞を、暗喩的に現代人の危うい精神状況と対比させて表現しようと考えたのだ。
想像を絶する犯罪都市と化した現代の日本。
そして、狂いだした世界の歯車・・・・

現代人の心を表現するのに、セピア色ほど相応しいものはないと、僕は考えている。
あらゆる免疫機能が喪失された状態、それこそが現代人のまさに今のこころの状況である、そんな気がしてならない。

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●「死霊」が講談社文芸文庫で出版
at 2003 04/20 17:01 編集

埴谷雄高 氏の「死霊」が講談社文芸文庫で出版されたという。
この記事を目にした時、一瞬驚きを禁じえなかった。
生前、僕は何度かご本人にお話を聞くことが出来たが、ご本人の意識の中には、「死霊」が文庫本になるなどという考えは、微塵も無かったのではないだろうか?


ましてや、埴谷氏の考えの中には、全財産を擲ってでも世界でただひとつの革表紙で金鋲作りの豪華極まりない本を作りたいという野望があったと記憶している。


何よりも埴谷氏の作品は難解で、安易に文庫の形式で読めるものではないと僕は考えていたし、それに見合うだけの読者が獲得できるのか、疑問に思えたのだ。


しかし、この文庫は出足好調だという。
案外、現代の若者達は、気楽な感覚でこの難解極まりない作品を読んでいるのかもしれない。
現代でこそ、この作品が本当の意味で流通できる土壌があるのかもしれない。


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●夢十夜●
at 2003 04/25 19:28 編集

●夏目漱石に対抗して、僕流の「夢十夜」を昨年の夏に書き始めた。
夏休みを利用して、3編はすぐに書き上げることが出来た。
しかし、その後、続編はまだ書かれていない。
じっくりと資料を当たる時間がないことと、一旦中断してしまうと興味が他方へ移ってしまい、再び書く気が起きないこと。
そして、何よりましてイメージの広がりが生まれてこないことが大きな理由である。
毎日のように文章を書いていると、自分でも何者かに盗り付かれたように一気に書き上げて驚くことがある。
そんな時は、大抵は日常に充実感を覚えている時だ。
人間、忙しすぎても疲れてしまい何も出来ないのだが、適度の刺激がなければ同様にたいしたものを作ることが出来ないものだ。
そうした状態で生み出されたものは、まずイメージの広がりに欠ける。
だから何を書いても同じようなものになってしまう。
要するに自分の頭の中だけで格闘していても、斬新な発想は生まれてこないのだ。
自己模倣が始るのは、そんな時だ。


散らばった夢の欠片・・・・
深層心理が封じ込められた欠片を一遍ずつ丁寧に拾い集めたならば、そこには閉塞された時代の中で出口を求めてもがき苦しむ己の姿が
現れるかもしれない。
もしくは、闘う気力も萎えた抑圧された民衆の声にならない叫びが封じ込められているかもしれない。

まずは自己の内面に深く沈潜し、
自分に対して問いかけること。
深層心理の中に封じ込められた情報は、海中に沈んだ氷塊の如く膨大だ。
自己疑念----
これを失った時、人間は飼いならされ、やがて殺される宿命を担った・・・

痩せたソクラテスではなく、肥えたソクラテスとして・・・・

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