これから私がみなさんにするお話は、とてもとても怖い内容なのです。
お願いです!
どうか心臓の弱い方は、ご遠慮ください。
これを読んで、あまりの恐怖に卒倒するかもしれません。

これは、本当にあった話なのです。
だからこそ、尚更怖いのです。
しかし、もし読んでいただけるのでしたら、どうぞ最後までお付き合いくださいね。

覚悟はよろしいですか?
それでは、これから始めさせていただきます。



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【真夏の夜の夢】




あれは果たして現実だったのか?
それとも真夏の夜の夢だったのだろうか?
俄かには信じられないかもしれないが、これは実際にあった話なのだ。
そして僕自身が体験したものなのだ。

今から30年以上も前の夏の話だ。
僕は仙台から車で東京に向かっていた。
夜の1時過ぎに仙台のホテルを出た。
翌朝の仕事の為、どうしてもその時間に出発せざるをえなかったのだ。

その夜は、雨がしとしとと降る淋しい夜だった。
僕はカーステレオのボリュームを上げて、車を走らせた。
仙台の東北縦貫道のインターの入り口までは、山の中を走っていくのだが、当時は照明も乏しく、殆ど鯨の腹の中に飲み込まれるような無気

味な印象があった。
僕は当時好きだったピーター・フランプトンのロックを流していた。
ロックでも流さなければ、殆どすれ違う車も無い山の道を走っていられなかった。

雨が視界を遮っている。ワイパーがしきりに雨を振りほどくのだが、現前の暗闇の山が、ワイパーが雨を押し流すたびに歪んで巨大な化け物に

見えた。
僕はスピードを押さえ気味に走り続けていた。
スリップでもしたが最後、事故は免れない。慎重に進まなければならない。
やっとインターの入り口が見えてきた。
山の中で見る料金所の灯りが、あれほど嬉しいものだとは、それまで思わなかった。
僕は料金所で、無愛想なおやじから料金表を受け取った。
それでも、人間に触れるということは勇気を蘇らすものなのだ。
僕同様、まだ起きている人間がいる。
そう考えると、それだけで、救われるのだ。


雨は相変わらず降っている。
僕はギアをセカンドに入れアクセルをふかした。
その時だった。
何と、高速道路の上を人が歩いているのだ。
一体、どうしたのだろう?
黒い足まで被さるドレスを着た、若い、そう20歳くらいの女性。
髪は当時流行っていた真中から分けたゴーゴーカット。長く伸ばした髪は雨に濡れ顔に被さっている。
その痩せた背の高い女性が、俯いたまま淋しそうに道路の真中を雨に打たれながら歩いているのだ。東京方面に向かって。。。。
南沙織に似た女性だった。。。。

変だ!
僕は咄嗟に訳が分からなかった。
でも、「変だ!これは、尋常ではない。」という気が強くした。
女性の脇を僕は恐る恐る通り抜けた。
生気が感じられない。
人間のエネルギーが感じられないのだ。
僕は、この女性が幽霊であることを、その瞬間確信した。
背筋に冷や水を浴びせられた感覚。
声も出無い。
咄嗟に、
僕は全速力で車を走らせた。
もうわき目を振らずに雨の高速を全速力で走りぬけた。
兎に角、この場所から逃げるのだ。
僕はアクセルを踏み続けた。

30分位走った所でやっとホッとした。そして、煙草に火を点けた。
「ふ〜〜、ここまで来ればもう安心だ。」
息を吐き出し、今、目にした光景は何だったのだろう?
僕は頭の中を整理したかった。
様々な状況を考えてみた。
考えても、考えても、答えはひとつだった。


あれは、幽霊だ。幽霊に間違いない。
僕は、それを確信していた。
その時、
ふと、何かに見つめられている気がした。
僕は全身から血が引いていくのが分かった。
何かが僕を見つめているのだ。
僕は勇気を振起してバックミラーを見た。
ふ〜、後部座席には何も無かった。
そして、安心して窓に目を見やった。

「はっ!!」
何と、
信じられないことに

あの女性がぴったり僕の車の窓にひっついていたのだ。

「ぎゃ〜〜〜〜〜っ!!!!!」

 

 

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これが本当に僕達の求めている世界なのかい?


【カラスの鳴き声】



その日、僕は仕事で川崎に向かっていた。
南武線に溝の口で乗り換え、川崎に向かう筈だったのだ。
しかし、疲れていたせいなのだろう。
本に目を通していた僕は、暫くしてそれが反対方向へ向かう電車であることに気がついた。
急いで飛び降りた駅は、霊園の中にある鄙びた駅であった。
この電車は本数が極端に少ないのだ。
人気のまばらな駅のベンチに腰掛けた僕は溜息をついた。

鳥の鳴く声が耳障りだ。
見上げると、
やけにたくさんのカラスが空を舞っているのが目についた。
まるで獲物を狙うが如く、天空を何羽ものカラスが円を描いて舞っているのだ。
僕は嫌な予感がした。

ふと、僕は遮断機の近くで放心した様子の中年の男に目が止まった。
男は、様子から失業者であるらしかった。
何故なら、男からは生気が感じられなかった。
僕は、その男の様子が何故か気になってしかたがなかった。
何かを思いつめた気配が、その様子から感じられたからだ。。。
僕はその男から目が離せなかった。
理由もなく、危険な感じがしたのである。
生きているのに、死んでいる。
そんなムードが漂っていたのだ。
その時、構内でアナウンスがあった。
時期に電車が到着するというアナウンスであった。

遮断機が警笛を鳴らし、下ろされた。
その男は、線路を渡ろうともせず、そこに立ったままだった。
僕は変な胸騒ぎがした。
電車が見えてきた。
段々と迫ってくる。
僕は男に目を見やった。
その時、男と目が合ったのだ。
男の目は大きく見開かれていた。
何かを覚悟した人間の目だった。
「や、やばい!」
僕は咄嗟に立ち上がっていた。
その時、男の体が遮断機を通り抜けた。
そしてあたかも電車を止めようとするかの如く、電車に向かって両手を広げ立ちはだかったのである。
男の口から、呪詛とも雄たけびともつかぬ言葉が発せられた。
全身からオーラが弾けるようにエネルギーが満ち溢れた。
運転手の大きく驚愕の余り見開かれた眼球が目に入った。
電車は激しい音で、車体を軋ませた。
街全体を揺さぶる程の激しい軋み音だ。


ほんの数秒の出来事だった。
そうなんだ。
まさに瞬間だった。
男の体は、粉々になったひき肉に変わっていた。
驚いて駆け寄る駅員達。
恐怖に目を反らす乗員達。
罵声が飛び交う現場。
鳴り響く警戒音。


そこへ、一羽のカラスが一目散に舞い降りてきた。
そして、仲間への合図なのだろう。
「くわ〜っ!」
と叫び、男の肉片を咥えて飛び立った。
すると天を舞っていた無数のカラスが舞い降りてきて、われ先にと肉片をついばみ出した。
たった数秒前まで生きていた男が、数秒後にカラスの餌へと変わってしまった。

誰が、一体誰がこの事実を笑えるというんだ!
彼と僕の間に一体どれほどの差異があるというんだ。
そして、あなたとの間に。。。。

この狂った時代の中で、一体現実を把握している人間など、いるのだろうか?
この狂った時代の中で、一体現実を心から満足して生きている人間など、いるのだろうか?

電車は50分ほど、停車していた。
消防車とパトカーが直にやってきた。

が、
警察の検分の後、その電車は何事もなかったかのように動き出したのだ。


すぐに彼の死は、つまらない物語に変わる。
また単調な日常が始る。
ただそれだけのことだ。。。。。
こんなものは、
日常でのささやかな極ありふれたドラマにすぎないのだ。

みんな同じ穴の狢にすぎないのだ。
そう、僕達は彼同様に、車輪の下敷きにされる歯車のひとつに過ぎないのだ。
一体、誰が彼の死を笑えるというんだ。。。。
自分をあざ笑うことなく。。。。

これが本当に僕達の求めている世界なのかい?
これが本当に僕達の欲している社会なのかい?



空で満足そうにカラスが笑った。

 「かぁーーーーーーーっ!」

 


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【不思議だ。】


う〜ん。不思議なことがあるものだ。
昨夜、夕飯を食べてゴロリと横になって新聞に目を通していた。
どうも疲れていたらしく、そのまま寝込んでしまったようだ。
ところが、確か夕刻8時頃だったか?
ニッセイの営業の電話に出て、その後の記憶がないのだ。
気がついたら、朝だった。

そうなんだ。
気がついたら、朝だったんだよ。
う〜む。
不思議だ。
それまでの時間は一体どこへ消えてしまったんだろう?


う。。。。
既に、

やはり朝だ。。。。

 

 
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【新しい生命体か?】


果たしてみなさんは、こんな奇妙な話を信じることが出来ますか?
実は、2〜3日前より、僕は風邪をひいた状態で、体がだるくてしかたなかったのです。
薬を飲み続けておりましたが、一向に良くなる気配がありませんでした。
こんな状態なのに、自分の意志に反して、ネットに入り込みたくて、逆らうことが出来ないのです。
あたかも見えない意志に操られているように、僕はネットの海に漕ぎ出してしまうのです。
体長が悪いのですから、ゆっくり休んだ方が良いに決まっているのにです。
しかし、変だ、変だと思いつつコンピューターの電源を入れてしまうのです。

ところが、先ほどくしゃみをした瞬間、喉の奥からなめくじのような軟体動物が吐き出されました。体長、7センチ位のまさに”なめくじ”

そっくりの生き物でした。
痰だと最初は単純に考えました。
しかし、違うのです。
よく見ると、それは体をくねらしながら動いているじゃあ〜りませんか!
僕はびっくり仰天しました。
確実に生きているのです。
少し、茶色じみた透明な生物です。
それが、洗面所のタイルの上で、体を左右に揺すっているのです。
僕は慌ててそいつに熱湯を浴びせ、その後洗剤を体中に打ち撒いてやりました。
そいつは、よっぽど堪えたものと見え、暫くの間、体をくねらしながら激しくもがいていましたが、やがて動かなくなりました。体から

生命の灯が失われた瞬間を感じ取ることが出来ました。
どうやら、僕はその怪物を退治することに成功したようです。

こうして落ち着いて考えてみましても、それは決して痰なんかではなかったのです。
あんな物が、喉の奥で生息していた訳ですから、苦しかったのは当然でした。
しかし、一体あれは何だったのでしょう?
そしてどこから僕の喉の中へ、入り込んだのでしょう?


★今僕は想像しているのですが、ひょっとしてネットを通じて僕の体に侵入したのではないのでしょうか?
電波の中で生息している新しい生命体。
それは、ネットを通じて害毒を撒き散らす新種の生命体かもしれないのです。
しかも知性を持った未知なる生命体かもしれないのです。
いや、地球創世時代よりこの世に棲みつき、神の手により地の底に幽閉させられていた”あの悪魔の生命体”が地球のマントルの隙間を見つ

けて這い出してきたのかもしれません。
ということは、地盤に亀裂が生じ始めている事を意味します。

火山活動が活発化しているというのでしょうか?

みなさんは、ご存知でしたか?
地震の予知は、かなりの確率で可能なのです。
ただ、それをしますと世の中が混乱しますので、2時間前に限られるのです。
この生命体が地上に現れてきた証拠として、富士山から目を離すことは出来ないでしょう。。。。。


●なお、これはフィクションですので、宜しくお願いいたします。


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■銅粉■



ジミーとモンローが日本にやってきたのは、今から5年前の夏のことでした。
ジミーは、金融関連の仕事に従事しておりましたが、日本への出張命令が下った時、二人はたいそう喜びました。ジミーは、黒澤明の映

画が好きで、大の日本びいきでしたし、モンローは、三島由紀夫や小泉八雲のフアンだったからです。
日本に来た当時、二人は喜び勇んで休みとなると鎌倉、京都、奈良、平泉・・・
日本中の神社仏閣を見て歩きました。
日本の古い文化に触れることが、当時の二人にとってなによりもの楽しみだったのです。
二人は、とても仲の良い夫婦だったのです。
どこへ行くにも手を繋いで、それは中睦まじい夫婦だったのです。
二人は早く子どもが欲しかったのです。
子どもを連れて、日本全国を旅行できたら・・・
いつもそう願っておりました。
しかし、残念ながら子宝には恵まれませんでした。
病院での検査の結果、モンローの体に異常が認められたのでした。
彼女は、子どもを産めない体質だったのです。

日本に来て2年目辺りから、二人の仲が気まずくなってきました。
ジミーは仕事で失敗が続き、会社の経営に大きな損失を与えてしまいました。
それは、株取引での失敗でした。
そのことがあってから、休みになっても二人で行動することがなくなりました。
ジミーは、朝早く起きると、「散歩に行ってくる。」
そう言ったまま、夕方まで帰らなくなりました。

モンローは、寂しさを感じていましたが、ジミーの立場を思えば、それも仕方がないな、と自らに言い聞かせておりました。ジミーが子

どもを欲していたのは、痛いほど伝わってきましたし、仕事上でのトラブル続いておりました。また日本の経済も難しい局面に差し掛か

っておりましたし、そんな中で、ジミーが過度のストレスを感じている事は容易に察しがついたからです。

ある日曜日の朝でした。
いつものようにジミーは、「散歩に行ってくる。」
そう言って出かけました。
モンローは、午前中洗濯をすまし、午後から公園に出かけることにしたのです。
いつも部屋の中へ一人でいることの孤独・・・
自然の中に包まれれば、少しは気分も癒えるだろう・・・
そう考えたからです。

日曜日の午後の公園は、家族連れで賑わっておりました。
両親に手を繋がれて、満面に笑みを浮かべた子ども達。
モンローは、「もし私達夫婦にもこんな子どもがいたらなぁ・・・・」
そう思うと悲しくなりました。
公園の中ほどに差し掛かった時に、そこに銅像が建っていました。
「あら、変ねぇ・・・前にはこんな銅像は無かった筈なのに・・・」
モンローは、その像を見つめました。
見れば見るほど、その像は、ジミーに似ているのです。
「今頃、ジミーは何をしているんだろう・・・」
モンローは、そう思うと涙が零れそうになりました。




その時です。
その目の前の銅像が「ピクッ!」と動いたのです。
モンローは、息が止まる位びっくりしました。
そして、銅像を凝視しました。
どう見ても、銅像です。
「動く筈はないわ。」
モンローがそう自分に言い聞かせたとき、
「何しに来た!?あっちへ行け!」
なんと銅像がそう答えたのです。
モンローは、仰天して、その場に座り込んでしまいました。

「ジミー、ジミー!あなたなのね?」
モンローが問い掛けると、銅像が答えました。
「あっちへ行くんだ!お前と話していると、他の人にばれてしまうじゃないか!」
モンローはその台詞を聞いてすっかり落胆してしまいました。


「私がどれほどあなたのことを心配していたか!あなたには分らないのね?」
「いいからさっさとあっちへ行くんだ!みんなに怪しまれてしまうだろう!」
「あなたは、こんなことしていて、幸せなの?」
「ああ・・幸せだよ。こうしている瞬間が、何よりもの至福の時なんだ。」

モンローは泣いていました。
周囲の人々が、何事だろうとモンローを見つめました。
が、誰もその銅像がジミーであることには気がつきませんでした。
「分ったわ!あなたは、一生そうしていればいいのよ!」
モンローは、顔を覆うと走り去っていきました。
その姿を道行く人々が不思議そうに見ていました。



それから数日後、その場所にはジミーの銅像が建っていました。
それは、今にも動き出しそうなほどリアルな銅像でした。




この銅像がジミーの死体に銅粉を塗したものであることが発覚したのは、モンローが服毒自殺をした夜、後に残された遺書によってでし

た。


《注》上の話は出鱈目です。ごめんちゃい。世田谷美術館にあるものは、芸術作品です。ご安心ください。
それから・・・・あんまり怖くなかったね?銅粉
 




 













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