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●OUT OF FOCUS●




南米ベネズエラのギアナ高地、オリノコ川流域で、翼を持った猿が発見された。
その猿は、体長が1メートル、全身を赤色の毛で覆われ、木の上で餌を探している姿を発見された。
目撃者の談によると、その翼を持った猿は、まるで人間のように見えたという。
鼻がやたら高く、頭には角のようなものがあったという。
但し、全身が厚い毛で覆われていた為に、猿と判断したとのことだ。
「我々の存在に気がつくと、背に付いた羽を使って、木から木へと飛び移り、やがて視界から姿を消した。あれは、見間違えたものじゃない。明らかに羽を背中に持っていたんだ。
奴と目があった時、どきっとしたよ。まるで、こちらの心を読み取るような、そんな目をしていた・・・
あれは、単なる猿なんかじゃない。」

その翼は、どうやら空高く舞い上がるだけの機能は、無い様だったと言う。
木から木へと、グライダーのように飛び移ることが精一杯だったという。
証拠となるものは何も残されていない。
数人の証言以外には・・・・





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●実は、僕は昨夜、不思議な夢を見た。
夢の中で僕は、どこまでも果てしなく地底へと続く古めかしい石畳の坂道を、地下へ向かって降りていった。
その道は、渦巻き状に曲がりくねっているのだが、階段ではなかった。
明らかに、それは道だったのだ。
周囲は、土の壁で囲まれ、天井も壁で塞がれている。
曲がり角には、古めかしいランプが置かれ、道を朧に照らしていた。
どれくらい深く僕は進んだことだろうか・・・
道の片隅に、男が膝を抱えて蹲っているのに気がついた。
それまで、一人として人間の姿に出会わなかったものだから、僕は自然にその男に話し掛けていた。

「この先には何があるのですか?」
男は、項垂れていた顔をあげた。
男の顔は、緑色をしていた。
それは、色を付けたものではなく、生まれつきそうした染色体を持っていることが分かる自然な色だった。目は清んだコバルト・ブルーだった。
優しい心をもった男であることが、男の表情から僕には分かった。

僕と男とは、会話は出来なかった。
なぜなら、男には口が無かったのだ。
しかし、男はテレパシーを使って意思を伝達することが出来た。
男は僕の胸の辺りに信号を送ってきた。

「私達は、あなたが訪れてくるのをずっと待っていたのです。
この先に我々の世界が広がっています。
さあ、どうか先へ進んでください。」

僕は、男の意思に従い、その曲がりくねった坂道をどこまでも下っていった。
そして、僕は地底の奥深くにある世界に到着したのだ。





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●破壊・・・・若しくは一陣の風



象徴的な出来事があった。
それは、10年以上に渡って、誰も住んでいないマンションの一部屋が舞台だった。
かって、年老いた老婆と中年過ぎの息子である男性が、ひっそりと二人きりで住んでいたが、いつの間にか男性の姿が見られなくなった。
もともと、近所付き合いもなく、都会のマンションの特徴として、そのことが隣人の興味をひくことも無かった。
誰しも、男性は結婚でもしてこの場を離れたか、さもなくば、どこか他へ独立して移り住んだものだろうと考えていた。
老婆は、やがてマンションを去り、老人医療の完備した施設へと移り住んだ。
が、その部屋は、その後、売りに出されることも無く、無人のまま10数年の歳月が過ぎたのだ。
管理費は、滞ることなく払われ続けていた。
誰も住む人のない部屋が存在することは、隣人にとっても不気味ではあったが、他人のプライバシーにまで立ち入らないことが、都会で生活する上でのルールだった。

ところが、最近になって、老朽化したそのマンションにネズミが姿を現すようになった。
特に、無人の部屋の両隣には、よく出没したようだ。
ネズミは、深夜人が寝静まった時間帯を狙って現れた。
そして、神棚の奉げ物の米とか、お菓子とか、ありとあらゆるものを食い尽くしたそうだ。
やがて、とんでもないことが起きた。
無人の部屋の隣人の赤ちゃんが、寝ている間に顔をネズミに食い千切られてしまったのだ。
しかし、この時までは、誰も犯人がネズミだとは想像しなかった。

噛み口がネズミのものであると断定した警察は、部屋中をくまなく調査した。
そして、台所の片隅に隠されたように、無人の部屋に通じるネズミの穴が発見されたのだ。

警察は、施設にいる老婆に連絡を取り、状況について具体的に説明したが、老婆はすでに痴呆症の症状が進んでおり、まともな応対も出来ない状態だった。
後日、警察は一応老婆の許可を得たことで、管理人と共に部屋の中に踏み込んだ。
10数年に渡って、扉を閉じたままの部屋は、呼吸が出来ない位の悪臭に包まれていた。
部屋に入ると、無数の小動物が慌てふためいて逃げ去る音がした。
「ネズミだな・・・」
誰もが直感した。

部屋の中は、10年前の家財がそのままの状態で残されていた。
しかし、ネズミに荒らしまわされた形跡が、至る所に見出された。
丸い糞が、部屋中に山積みになっていた。
警察が踏み込むと、ゴキブリが、何匹も足元を驚いたように逃げ回った。
「これは、ネズミとゴキブリの巣になっているね。」
蒼ざめた表情で、一人の警察官が管理人につぶやいた。
震えながら頷く管理人。
部屋の中の悪臭は、尋常ではない。
歩く度に積もった埃が舞い上がった。
誰しも、手で口を塞ぎながら前へ進んだ。

奥の部屋に辿り着いた。
その部屋は寝室だった。
しかし、襖が閉められていた。
管理人が、恐る恐る扉を開いた時、
誰もが驚きの余り、息を飲んだ。


何と、布団には一体の骸骨が横たわっていたのだ。


その骸骨は、手を天に突き上げるような姿勢で横たわっていた。
肉は、全てネズミに食い尽くされた様子だった
検死の結果、その骸骨は、病死した男性のものだということが判明した。







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●セピア色の季節---若しくは廃墟への憧憬



僕は、ビルとか家が取り壊されている姿に妙な懐かしさを覚えてしまう。
外壁を取り壊され、ポッカリと内部を曝け出した光景に、そのビルの中で流れていた筈の時間を夢想するのが好きなのだ。建物にも、記憶は宿るものだろう。そこで生活していた人間がいて、様々な感情が交錯し、それが建物の中に記憶として刻まれるのだ。

動物は、自らの死体を人目に曝すことを嫌う。
飼い主に知られずに、自らの死に場所を探し、そして静かに死んでいく。
建物といえども同じ筈だ。
誰にも知られずに静かに死にたい・・・
そう願っている筈なのだ。

昨今のメタルカラー全盛の時代では、人間さえもが<もの>に転化されてしまう。
物質崇拝、貨幣万能、すべては効率の名の下に管理される。
この風潮は、自らをサイボークでありたいと望む、そんな人間さえも生み出したのだ。

かって、僕は「幻視の漂泊」という小論を書いた。
そこで、
僕は<もの>と化していく人間を取り扱ったのだ。
人間が<もの>と異なる一番重要な点は、人間には心があるということだ。

この心の問題を巡って、様々な葛藤が生じ、現実生活との軋轢で病に臥す現代人が大量に存在する。
現在の日本のように市況が冷え込んだ状態では、尚更そうなのだ。
右肩上がりの経済成長など、最早望むべきも無い。
今までの「イケイケドンドン式」の販売など、最早市場が支えきれなくなってしまったのだ。
市場が既に崩壊しているのだ。
ならば、

さて、これからの時代に何が要求されるのか?


それは、心。

人間の心だ。

今まで通用した既成の概念がすべて崩壊を始めている。
営利絶対主義的思考は、もはや時代に合わなくなってきているのだ。
それは、本来人間的な営みとはずれていたからだ。
そのずれが、今巨大な穴を開けて、全てを飲み込み始めたのだ。
それを僕は「キングコング」であると思っている。

僕は、ここ数日幽霊の訪問を受けていた。
そして、さきほど田舎より電話が入った。
女房の仲の良かった従兄弟が亡くなったという連絡だ。

人間の心とは、時空を越えて通じ合えるものなのだ。
物質を離れて存在しているものなのだ。
今まで、我々は物質偏重主義に毒されて生きてきた。
それもやがて終焉を迎えることだろう。

これからの時代は、<心>が何よりも重要なファクターになることは間違いないだろう。




あなたの<心>は、
今、元気ですか?



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●魔界の宮殿■


言うまでも無いことだが、木々も植物も森も、昆虫も動物も、魚類も鉱物さえもが生きている。
それらには、我々には見ることが出来ないが、霊が宿っているのだ。
霊が集まるというか、好む空間がある。そこは、霊たちのしきたりによって成立している世界だ。
神聖なる場所のことだ。
それは、我々の住む世界とは、結界によって隔てられている。
俗人が、入り込むことの許されない一定の区域だ。

通常、霊は山の磁場に惹かれて集まってくる。
人間達も昔からそのことを知っていた。
だからこそ、磁力が強く作用する空間は、太古より霊山として敬われてきたのだ。
しかし、その結界が破られることがある。
ここでは、スノボーを楽しんでいた若者が、ふとした偶然から結界を破り、神聖なる空間に入り込んでしまったという設定だ。


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「ここは、どこなんだろう?右も左も、上も下も分からない空間だ・・・
一体、どうなっているんだろうか?僕は、何故こんな所にいるのだろう?」

「ようこそ、我々の世界へ。」

「誰?今、僕に話し掛けたのは誰なの?」

「我々は、君のご先祖様だよ。(爆)」

「ご先祖様?」

「そうとも、ご先祖様だよ。(大爆)」

「ここは、どこなの?」

「ここは、霊が集う場所。君たちの世界とは、異空間だよ。君は、偶然にも我々の世界に紛れ込んでしまったのだ。」





「こんな所、ごめんだよ。帰りたいんだ!みんなの所へ!」

「折角、訪れたんだ。ゆっくり楽しんでいったらどうだい?(笑)」

「嫌だ!こんな不気味な世界は、好きじゃ無い!」

「これはこれは・・・無礼な人間だね。(笑)」

「僕はスノボーを楽しんでいただけなんだ。こんな世界には興味がないんだ。早く返してよ!」

「自分から、我々の世界の縄張りに侵入してきて、その言い草はないものだ。(苦笑)」

「誰?誰なの?先ほどから僕に話し掛けているのは?」

「私かい?私は君の目の前にいるよ。」

「目の前には、木があるだけだよ、誰が話しているの?」

「わっはははは!(大爆)
その木が君に話し掛けているんだよ。」

「・・・・・・・」


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こんな具合に木が語るとしたら、みなさんはどのように思われることだろうか?
しかし、実は木の中にも霊が宿っているのだ。
人間と同じように、生きているのだ。
みなさんの先祖の霊が、もし木の中に宿っているとしたら・・・・
あなたの先祖の霊が、実際にこの世に存在するとすれば・・・・
そして、日夜あなたのことを見守っているとしたら、

あなたは、どう考えますか?


あなたは、一人ではないのだ。


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